映画『オリオンの季節』公開によせて
最新作、映画『オリオンの季節』を発表しました。映画制作引退を宣言して1年も経たずして、再び制作に復帰することになるとは思ってもいませんでした。そんなぼくの制作を、ほんとうにたくさんの方が支えてくれました。ここでお礼を言います。ありがとう。
制作
2016年の大晦日、ぼくは本気で映画を引退するつもりで、映画『渚に走れ』を発表しました。ぼくは半ばうつ病状態でしたし、制作する力も、19歳の後半からしだいに衰えていくのを感じていました。また、たしかに失恋ばかりで複雑すぎる映画作品になってしまったものの、ぼくは『渚に走れ』のエンディングを心から愛していましたから、これ以上いい引退はありえないと思っていました。
撮影班の半数が大学を卒業し、もうほんとうに映画を撮ることはないだろうと思っていたとき……宮崎駿の映画復帰や、ぼくと主演が大好きだった漫画『いちご100%』の復帰ニュースが入ってきました。また、就活を終えてある程度時間ができ、また制作をしない期間に力も回復してきましたので、それもあいまって、ぼくもまたなにかつくりたいと思い始めました。しかし、あれほど声たかだかに引退宣言をしましたから、さすがに復活は難しいだろうと思っていました。ですから、小説や作曲などの表現手段を試していました。
そんなときに声をかけてくれたのが、今回助監督を務めてくれた、川添君と、配役の山下君でした。彼がTwitterで、復帰しても誰も怒りやしない、と言ってくれたのを皮切りに、ぼくは本格的に、また映画を撮ることを考え始めました。それに関心を寄せてくれた友人たちもいて、まだ十分、映画を撮ることは可能なのだと確信しました。
しかし、ぼくはもう、恋愛というテーマについては描ききったつもりでいました。ですから、On your markやStand by meのような青臭さを表現しようと筆を執りました。しかし、恋愛映画ばかり撮ってきたぼくですから、やはりそれも外せないような気がして、最初にできあがった脚本は、主人公の心理を描いているのか、青春を描いているのか、恋愛を描いているのか、どっちつかずで中途半端になっていました。そんな脚本にペンを入れて、今作では、2名がシナリオ構成段階から練り直しを手伝ってくれました。回復してきたとはいえど、だいぶ制作精神が弱ってしまっているぼくですから、彼らの手助けがなければ、ぼくは脚本を書くことさえできなかったでしょう。
撮影や編集にあたっても、とにかく、今作はひととの共作であるということを感じさせられる作品でした。ぼくはこれまで、制作は比較的、一匹狼でやってきたつもりでした。撮影では数え切れないほどのひとに支えられましたが、企画立案や脚本、編集や予算運営、交渉はすべてぼくが担当していました。しかし今作は川添君を筆頭に、ゼロベースでひとと制作に当たりました。これまでスケジュールで決めざるをえなかったキャスティングも、話し合いを行いました。ですから、これまでの八代作品とはまったく毛色の違う運営でしたし、そのぶん、新しい色を帯びた作品に仕上がったと思っています。
クリエイターとしてはほんとうに壊れかけであるぼくが、今作をつくれたのは、ほんとうに撮影班をはじめ、関係者のみなさんのおかげです。心から感謝しています。
作品について
今作は、モラトリアムが終わる直前の青年心理を描いたものです。ぼくらは長い生徒・学生生活を経て、大人になっていくわけですが、そのなかで挫折や、将来への不安を経験してきたと思います。描かれてきた青春像というのはいつも、勢いがあって、不安はあるけどなんとか乗り越えたりして、純粋で、とにかくさわやかなものが多いと思います。しかし青春というものには、もう少し、影が隠れているようにぼくは思うのです。未完成なぼくらはもっと複雑で、屈折していて、なのに頑固でどこか引っ込みがちである、そんな側面もあると思うのです。今作は、自由な期間が終わろうとしている登場人物たちが、どうそれに向き合うのかを描きました。これ以上はネタバレになってしまうので、公開からしばらくしてから詳細を綴ろうと思います。これまでの八代作品は長編が多かったので、余裕がなくてできなかったこともいくつかありました。音声問題などはそれが典型で、不明瞭な音声は視聴者のみなさまに一定の緊張や不安を与えてしまっていたと思います。今回はそれも克服しました。音声が聞こえない部分はすべてアフレコしましたので、安心してご覧いただけます。
また、作曲を学んだことで、主題歌の作曲にも成功しました。はじめての作曲だったので、3ヶ月の期間を要しましたが、いい曲に仕上がったと思っています。
そういった背景もあり、今作は非常に満足のいくクオリティになりました。最後の編集は川添君も同席のうえで行いました。夜中の3時に試写会をして、ふたりで納得し、固い握手をしました。それだけ、自信をもって、ぼくらが贈ることができる作品です。身内ネタで笑ったり、こっぱずかしいシナリオでくすぐったい気持ちを起こさせたりなど、これまでの作品は身内用娯楽作品にとどまりがちなところもありましたが、今回は立派な"自主制作映画"として結実したと思っています。30分の短編ですから、ぜひみなさま、なにかの空き時間にでもかまいませんから、ご覧いただけますとありがたいです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
というわけで、疲れてきたのでここまで。また投稿いたします。
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