スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

2020の投稿を表示しています

人とつま恋Blu-rayを見た話

先週の土曜日のことだった。 昭和歌謡好きの友人が、家に遊びに来た。吉田拓郎と中島みゆきがお互いに好きなものだから、つま恋ライブのBlu-rayを一緒に見ようということになったのである。知っている人は知っているだろうが、吉田拓郎のライブに中島みゆきがサプライズで登場して、「永遠の嘘をついてくれ」を歌った、伝説の一幕である。 じつはこのつま恋ライブのBlu-ray、元々中島みゆき好きで意気投合していた盟友と見ようと買ったものだった。しかしそれを買った数か月後に彼が交通事故で亡くなってしまったものだから、その計画は立ち消えになってしまった。 それから二年後、中島みゆき好きのひとと縁ができてこうして鑑賞ができたというのは、ぼくにとってはとても嬉しいことだった。彼らの歌のすばらしさを讃え、歌と繋がったきっかけなども話した。 ぼくらの年代ではなかなか拓郎やみゆきが好きなひとがいないものだから、ぼくはもう嬉しくて楽しくて、すっかり酔っぱらってしまった。大好きなものに対して同じ感動を共有できるということは、ありふれているようで、じつはとても稀有で大切なことだ。 それまでにぼくが買いためていた中島みゆきのライブBlu-rayも鑑賞し、CHAGE and ASKAや尾崎豊のライブ映像なども鑑賞した。ちょっとギターをかき鳴らしたりもしたが、ほろ酔いだったのでうまく弾けなかった。次はちゃんとしたライブに招待したい。 そんなこんなで昭和歌謡を楽しんだわけであるが、夜が深まるにつれて、ぼくの持っているライブ映像が終わってしまうかなしさを感じた。ぼくが中島みゆきを好きになってから少しずつ買ってきたライブ映像たちも、たった一晩の飲みで鑑賞し終わってしまうとは。ずっとライブ映像の山を見ながら、その音楽に感じ入りながら、夜を明かしてしまうくらいの資源が欲しかった。「うちには無限にライブ映像があるんだぞ」と意気揚々と次のディスクに切り替えたかった。 友人を駅まで送った後、帰り道に歌った曲は「永遠の嘘をついてくれ」。鑑賞会のさなかで垣間見えた、私たちに残された彼らの映像資源の終わり……いや、まだまだあるはず。きっと。新しいディスクを探すぼくの手は、やはり永遠の嘘を探している。

待ち合わせ

待ち合わせをするときの 緊張が少しだけ好きだ ひとと接するのは好きだけれど ストレスも感じやすい性分だから その絶妙な境界が 待ち合わせの時間に漂う 期待、いや、夢が まだ生きているのもいい

死は真っ白のまま

これまで出会ってきた死というものは みんな、あまりにも真っ白だった だからぼくは怖くなる 最初は、おじいちゃん サークルの合宿中、弟からのメール 次はおばあちゃん 大学で英語のテスト中、母さんからのメール そのあとは、弟 学校の担任から1本の電話 みんなで探し回って 翌朝、今度は警察からの電話 そして、友だち 友だちの彼女から1本の電話 死はいつもダイヤルの向こう側にいて そのキャンバスは彩りをもたない

優しい歌を聞くと

優しい歌を聞くと 泣いてしまいそうになる その優しさに心が解かれて そしてもう一度 泣いてしまいそうになる 解かれた心が 優しい歌のあの彼岸に もう 手が届かないことを知って 優しい歌が好き 優しい歌が嫌い

異国の店と私

 疫病の混乱で国内がざわつく中、ぼくは別の報に肩を落としていた。留学時代に足しげく通ったドイツ・ケルン郊外のビアガーデンが、閉店したというのである。  Planet Hürth……店の名前である。スーパーと学生寮があるくらいの小さな駅にその店はあった。ケルン中央駅からトラムで30分もかかるうえ、これといった名所もないところだから、その店を知るひとはほぼない。地元の人々に愛される店だった。  留学したてのぼくは、ドイツ語も、地域のこともほぼ知らなかったものだから、しばらくは学生寮で勉強や研究をして過ごした。しかし入国して少し経ったころ、そろそろ勇気を出して、寮近くの店を探索してみようと思い立った。そのときに入った一軒目が、Planet Hürthであった。  扉を開けるとカウンターには小太りの店主がたたずんでおり、客はまだいないようだった。のちに彼の名前はディエターさんというのだと知った。  勉強しているとはいえ、やはりメニューはほぼ読めない。ぼくはさしあたりビールを頼んだ。食事もカリーブルストくらいしか知らなかったものだから、それを注文した。ビールも食事もとてもおいしかったが、それを伝えるすべがなかった。ディエターさんもぼくがドイツ語ができないことは察しているようで、とくに話しかけてくることもなかった。  しばらくすると、そこに客が入ってきて、隣のカウンターに座った。その客は英語が話せたものだから、少し雑談したのち、ぼくは思い切って食事の感想の伝え方を教わることにした。客はさまざま例を出して教えてくれた。ディエターさんがほかの客に食事を提供して戻ってくると、ぼくは会計をして、最後、「おいしかった」と伝えた。ディエターさんはそのときはじめてぼくに笑いかけた。「ダンケシェーン!」と豪快な挨拶をして、ぼくが玄関を出るまで見送ってくれた。これがディエターさんとの出会いである。  それから、ぼくはその店に足しげく通うことになった。とくにゼミナールがあった水曜日の夜や、学食に行けない土曜日などはほぼ毎週店を訪れた。ドイツ語の上達が遅かったものだから最初は挨拶だけだったが、だんだん小話くらいができるようになった。ドイツ語の日常会話はここで教わったといっても過言ではない。ディエターさんはぼくが店を訪れるたび、「Gut?(万事OKかい?)」と尋ねてきた。店にいるとぼく

海を進む

ひとりでこの海を渡ってきたけれど 朝靄の沖合も 夕凪の海岸も ひとりでこの海を渡ってきたけれど 南へ舵を切る 客船に手を振って 嵐も幾たびか 乗り越えてきたけれど 氷山も幾たびか 乗り越えてきたけれど 星がまたたくこんな夜が いちばん恐ろしい この夜が明けるころ どこにもいない私が消える 忘れようとするけれど 忘れようとするけれど そんな気がしてしまう 錨を捨て去った この小さな船の名を もう、誰も、覚えてはいないだろう

「死にたい」より「消えたい」

起死念慮とか、自殺願望とか。そういう言葉はうまく合わない。 消尽願望という言葉が近いだろうか。そういう気持ちを抱くことがある。 飛び降り自殺をして、葬儀をされて、"亡くなったひと"として扱われるのは嫌だから。 たとえばある日、突然少し強めの木枯らしが吹く。そのときぼくの身体が、つまさきから少しずつ砂に変わっていって、どこへともなく飛び去っていく。「ああ、ここで終わりか。はーい」と、映画のワンシーンを撮り終えたような気持ちで、ぼくの意識は薄らいでいく。 親しかった人たちのひとにぎりが、写真や作品でぼくを思い出す。それでも決して会おうとか、連絡を取ろうとかは思わない。だから、ぼくが消え去ったことには、誰も気づかない。 もし死後の世界があるのならば、彼らが亡くなったとき、こんな会話ができたらいい。 「えー、しろちゃん先に消えてたんだ」 「うん。ぼくのときはちょっと強めの木枯らしだった。そっちは」 「こっちは春一番で消えたよ」 「それもいいね」 「あ、あそこで鳥が鳴いている」 「うん。あ、ほらあっちにも」 なんてね。

自転車で走っているときに

今日、久しぶりに自転車に乗った。 自転車で走っているときに、 ふとむかしのことを思い出した。 むかし夢中になった本や むかし夢中になった女性や むかし夢中になった曲を。 自転車に乗っていたものだから、強く反芻することはなかったが、悪い時間ではなかったな、と思う。 悪い時間になるくらい、 もっと、いまという時間を、 盛り上げなければならないな、と思う。

悪魔

恋に破れてしまったり 大きな挑戦に失敗したり 大切なひとが命を落としたり 悲しいことはいくつもあるけれど 死にたくなるときというのは そういうのとは少し違う ある朝 気づいてしまったときとか そうした挫折の先にある自分が すっかり空っぽであること 帰り道 思ってしまったときとか 小さなアパートの電気やガスを 自分で点けなければならないこと 当たり前だったはずの1秒1秒が 死の衝動に化けることがある いつか いつか、ぼくの自制心が あの悪魔に負けてしまうのではないかと 恐れて震える夜がある

映画制作管理ツールの開発

MovieTasker 現在開発している映画制作進捗管理ツールの暫定名称である。 主にユーザー側の端末に処理を実装し、サーバー側には主に認証とデータベース処理のみを行わせている。 企画から脚本、撮影、編集などの進捗情報を管理できる。 最終的には撮影日、気象条件などを登録し、リマインダや警告表示をできるようにする予定である。 ぼく自身は生業を情報技術者としているが、本業はクリエイターだと考えている。 だから、学んできた技術でクリエイターに資するアプリケーションを開発できているのは、とても有意義なことだ。 このアプリが完成したら、次は新作映画「はしご」の制作の乗り出す。その際はこのブログでも告知するので、乞うご期待。

2020年やりたいこと

しばらく、夜に詩のようなものを投稿し続けていたけれど、新年であるから、今年の抱負でも綴ろうと思う。 まず、作品としては、 ・新作映画「はしご」 ・新曲(タイトル未定) を進められるだけ進めるのが目標である。 映画『ペルセウスの夜』を機にCubaseが触れるようになってきたので、今年は音楽系にも力を入れていきたい。 哲学の分野においては、ベンサム『道徳および立法の諸原理序説』の一章までを訳したい。どこまでいけるか、頑張りどころである。 情報等のスキルについては、2019年にだいぶ資格を取ることができたので、高度な情報数学と、電子系に攻めていきたい。 マイブームのチェスでは、chess.comでの戦績を上げていきたい。 2019年は成長の一年だった。 今年は実りの一年としたい。