ひとりでこの海を渡ってきたけれど 朝靄の沖合も 夕凪の海岸も ひとりでこの海を渡ってきたけれど 南へ舵を切る 客船に手を振って 嵐も幾たびか 乗り越えてきたけれど 氷山も幾たびか 乗り越えてきたけれど 星がまたたくこんな夜が いちばん恐ろしい この夜が明けるころ どこにもいない私が消える 忘れようとするけれど 忘れようとするけれど そんな気がしてしまう 錨を捨て去った この小さな船の名を もう、誰も、覚えてはいないだろう
八代翔の随想や制作活動の進捗について投稿します。