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3月, 2018の投稿を表示しています

映画『オリオンの季節』完成によせて(2)

 早いもので、映画公開からもう1週間が経ちました。  前回綴りきれなかった部分を綴ろうと思います。今回で完結です。 シナリオの軌跡  今作で主題となったのは、学生生活終盤における青年心理であったわけですが、その実、3人の持つ課題がそれぞれ異なったものであることも事実です。  脚本第一稿では、大輔の物語がメインでした。哲也に登山に誘われるのは今作通りですが、幸子が同行しており、4人の物語でした。そして、物語の大一番は、山頂はもちろんでしたが、登山中、大輔が幸子に昔好きだったことを告げる、という場面でした。それで一区切りがついて、大輔の映画制作再開のファクターとなるわけです。  しかし、そこに中途半端に哲也や誠の決意も混ざったものですから、大輔の物語なのか、メロドラマなのか、3人の青臭い物語なのか、どっちつかずになっていました。シナリオ構成を手伝ってくれた久保田くんに最初それを指摘され、どれかひとつに絞ろう、ということになりました。ぼくはまず、これまでの映画制作でずっと続けてきた、メロドラマを廃する決意をしました。ぼくは恋愛については描ききったと思っていましたから。  大輔の物語にする場合は、むしろ1人で登って、出会う人物も1、2人に絞ったらどうか、という久保田氏の提案もありました。それもありだな、と思い、ぼくは大輔の物語にするのか、3人の物語にするのかを悩みました。そして、大輔の物語には課題が多いことに気がつきました。彼個人の葛藤や山頂におけるカタルシスを、台詞なしの映像でどう描くのか。また、映画制作者というキャラクター像がぼくの自叙伝として終わってしまわないか。それよりは3人の物語にすべきであろう、というのがぼくの思いでした。もちろん、キャスト志願をしてくれていた友人諸氏みんなと映画を撮りたいという気持ちもありました。それを決意した段階で、シナリオ構成MTとなりました。このから、助監督の川添くんが本気モードでぶつかってきてくれました。非常に多くのコメントを書いた第一稿を携えて、彼はコアワーキングプレイスにやってきました。そして久保田くんももちろんやってきました。ぼくより桁違いで映像作品を鑑賞しており、創作姿勢もある2人でしたから、むしろぼくが恐縮するくらいでした。  脚本会議ではさまざまな議論が交わされ、少しだけ休憩時間は取ったものの、5時間ほぼ

映画『オリオンの季節』公開によせて(1)

映画『オリオンの季節』公開によせて 最新作、映画『オリオンの季節』を発表しました。映画制作引退を宣言して1年も経たずして、再び制作に復帰することになるとは思ってもいませんでした。 そんなぼくの制作を、ほんとうにたくさんの方が支えてくれました。ここでお礼を言います。ありがとう。 制作 2016年の大晦日、ぼくは本気で映画を引退するつもりで、映画『渚に走れ』を発表しました。ぼくは半ばうつ病状態でしたし、制作する力も、19歳の後半からしだいに衰えていくのを感じていました。また、たしかに失恋ばかりで複雑すぎる映画作品になってしまったものの、ぼくは『渚に走れ』のエンディングを心から愛していましたから、これ以上いい引退はありえないと思っていました。 撮影班の半数が大学を卒業し、もうほんとうに映画を撮ることはないだろうと思っていたとき……宮崎駿の映画復帰や、ぼくと主演が大好きだった漫画『いちご100%』の復帰ニュースが入ってきました。また、就活を終えてある程度時間ができ、また制作をしない期間に力も回復してきましたので、それもあいまって、ぼくもまたなにかつくりたいと思い始めました。しかし、あれほど声たかだかに引退宣言をしましたから、さすがに復活は難しいだろうと思っていました。ですから、小説や作曲などの表現手段を試していました。 そんなときに声をかけてくれたのが、今回助監督を務めてくれた、川添君と、配役の山下君でした。彼がTwitterで、復帰しても誰も怒りやしない、と言ってくれたのを皮切りに、ぼくは本格的に、また映画を撮ることを考え始めました。それに関心を寄せてくれた友人たちもいて、まだ十分、映画を撮ることは可能なのだと確信しました。 しかし、ぼくはもう、恋愛というテーマについては描ききったつもりでいました。ですから、On your markやStand by meのような青臭さを表現しようと筆を執りました。しかし、恋愛映画ばかり撮ってきたぼくですから、やはりそれも外せないような気がして、最初にできあがった脚本は、主人公の心理を描いているのか、青春を描いているのか、恋愛を描いているのか、どっちつかずで中途半端になっていました。そんな脚本にペンを入れて、今作では、2名がシナリオ構成段階から練り直しを手伝ってくれました。回復してきたとはいえど、だいぶ制作精神