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お金に関して少し勉強をした話

新作の制作が終わって、撮影機材もそろって以後、ぼくは少しお金の勉強をした。

制作機材は最優先事項であるため、これまでそこに資金を投じてきた。しかし、必要なものが最低限そろった今、余剰資金の使途を確定する必要が出てきたためである。旅行や酒に使っていた大部分の支出について、緊急事態宣言下で著しい制限を食らっているというのも大きい。

2冊ほど投資やそれにまつわる税額免除制度の本を読み、インターネットで各種情報をさらい、確実性が高く、導入と運用が容易であり、初期資本を必要としないものに絞った。

なぜ上記の条件で絞ったか。ぼくは大してお金持ちではないし、またお金(金融資産や不動産含む)にお金を稼がせるという考え方は正直好きではない。したがって、それを本命とはしないが、余剰資金運用として「ただ現金を銀行口座に貯めるだけ」よりは賢い立ち回りを目指したのである。結果として、3つの使途に絞られた。

  1. つみたてNISA口座上でのインデックス投資
  2. 楽天経済圏の導入
  3. ふるさと納税

つみたてNISA口座上でのインデックス投資

最近少しずつ名前が知れてきている、インデックス投資である。
これはどういうものかというと、株価の指数に応じて資産が増減するような投資信託である。
もっとわかりやすく言うと、世界や日本の株価が上がれば自分の資産も増えるし、逆ならば減る、というものである。
「当たり前じゃあないか」と言われるかもしれない。そう、当たり前なのだが、インデックス投資というのは、有望株をあえて狙ったりしない、という特性がある。世界中(もしくは日本中・米国中など)の株式に分散投資を行い、できるだけ、世界全体の株価に比例するように買い付けを行う。1社の株価が急上昇・急降下しても、全体の株価さえ急変しなければ影響はない。
ここで、全世界の株価の歴史というものを見てみていただきたい。株価が出せるサイトで10年、20年単位でグラフを出してみるとよい。そうすると、不景気で急落することはあっても、全体としては右肩上がりであることがわかる。この、「長い目で見れば確実に上がっていく」という株式市場の特性に乗っかろうというのがインデックス投資である。
そしてその投資について、年額40万・最大20年まで、非課税口座で積み立てていいですよ、というのがつみたてNISAである。通常は株で儲けると高い税金がかけられるが、この口座に貯めてきて儲けた分はそのまま懐に入れてよい、というものだ。
数字的に納得のいくものであったので、ぼくは月3万ずつこのつみたてNISA口座で貯金をするように決めた。

楽天経済圏の導入

楽天経済圏とは、普段使うサービスを片っ端から楽天のものにすることによって、楽天ポイントを貯めていこうというものである。
正直個人的にはこれが一番抵抗があった。楽天はデザインや広告がみんな安っぽいし、ポイント活動は時間単価に見合わない、とかねてから感じていたからである。
だが、勉強していくにつれ、合理的な選択であるという結論に落ち着いた。
ポイントを貯めるためにあえてなにか作業をする、というよりは、私生活を普通に送っているうちに勝手にポイントがたまっていく仕組みをつくる、というのがこの楽天経済圏の主眼である。
電気、ガス、スマホのSIMや光回線、上記のインデックス投資の証券口座、これらをすべて楽天のサービスに変えた、というのがぼくの全作業であった。
ポイントというと買い物をするときにしか使えない印象があるが、電気・ガス、インデックス投資等々、毎月かかってくる費用をポイント優先で引き落とす、という設定が楽天では可能である。したがって、うまく設定すれば、これまでとは変わらない生活をしつつ、勝手にポイントが貯まり、そして使われていく、という仕組みを構築できるわけである。
おそらくSoftBank、Yahoo経済圏でも同様のことができる。要は長いものに巻かれて巻かれ切って甘い汁を吸うわけである。
厳密にはお金の使途とは言えないが、ぼくはこの楽天経済圏の導入を第二に進めた。

ふるさと納税

知らないひとはほぼいないのではないか。ただ、実際にやったことがあるかどうか、で言うと、実は少ないのではないかとも思う。
簡単に言うと、住民税を別の自治体に納めるとその自治体から返礼品が届きます、というものだ。
我々は普段住民税を納めているが、それは基本的に居住する自治体にあてられている。しかし、過密化・過疎化でこの偏りはどうしても生じる。この一極集中を避けるため、住民税のうち一定額は、自分が指定する自治体に納めてよいですよ、という制度である。
制度利用に2000円分の自己負担額が必要であるが、それ以上は、法規上の限度額内でふるさと納税をする限りは自己負担は増えない。住民税が別の自治体に行くだけである。
したがって、ふるさと納税サイトにおける返礼品は、実質2000円の負担でもらうことができる。
さらに、楽天ふるさと納税においては、ものによって2000円以上のポイントが付くものがある。
結論を言うと、返礼品(ぼくの場合は酒)を注文して、お金もポイントでもらえる、といういいことづくめの制度なのである。これはノーリスク・ハイリターンであるため、ぼくは利用することに決めた。

結論

今回はぼくがお金の勉強をして選んだ3つの使途を紹介した。
お金本位の人生は、正直美しくないとぼくは思う。
お金のことばかり考えているのも、お金に依存するのも、美しくない。お金のために翻弄されるのは、もはや人間的人生ですらない。お金があることにものを言わせるのは、さらに醜い。
美しさとは、失意の帰り道に屋台で奢られたカップ酒や、公園のストリートミュージシャンや、改造に失敗して使えなくなったバイクのマフラーに存在する。
ただ、だからといってなにもお金のことを考えない、というのもそれは違う。なんだかうさんくさいから、学ばない・考えない、といった姿勢は、一般にバカと呼ばれるものである。
これからの人生で出会ういろいろな機会に備えて、合理的であると思える経済的ナレッジは導入したほうがよい。
とくに若者は、最初に上記のような仕組み・使途を確定させておけば、確実に少しずつ、「ただ現金を銀行口座に貯めるだけ」よりは得をすることができる。
ぜひ参考になれば幸いである。

なお、念のため付しておくが、ぼくはなにかの回し者ではないし、この記事で1円も利益は得ていない。

コメント

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